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オペアンプがすごい理由

オペアンプはアナログ回路の設計で必ずと言っていいほど、よく使われる回路です。
オペアンプの応用例はいくつかあるのですが、オペアンプが使われる理由として最も重要なものとして高精度な信号処理が可能だということが挙げられます。

ここでは、なぜオペアンプがアナログ回路にとって欠かすことの出来ない回路なのか、一例を挙げて説明したいと思います。

1. 信号増幅の問題点

信号の増幅は、「第4章 アナログ電子回路の基礎」の4-1 アナログ電子回路の基礎とはで述べた通り、図1 のようなエミッタ接地増幅回路(もしくはソース接地増幅回路)を使えば可能です。

接地増幅回路

図1. エミッタ接地増幅回路 および ソース接地増幅回路

しかし、図1 の回路を用いると不都合なことが出てきます。
トランジスタや抵抗といった素子には、製造ばらつきといったものがあります。つまり個体差があり、特性が物によって異なります。
また、温度変化によって特性が変わる「温度特性」の持っています。
特に、トランジスタのような半導体素子は製造ばらつきや温度特性が顕著に出ます。
この特性は非常にやっかいです。

例えば、温度センサーについて考えてみましょう。センサーからの信号を 10倍して、温度を表示していたとします。
しかし、物によって、または温度によって信号増幅の倍率が変わってしまっては正しい温度を表示することが出来ません。

この問題を解決するために、オペアンプを使って負帰還回路を構成します。


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2. 高精度に信号を増幅する方法

オペアンプとは電圧利得が数百倍、数千倍以上の回路ですが、この電圧利得をそのまま信号増幅に使うことはほとんどありません。
電圧利得が高すぎて、とても使い物にはなりません。
しかし「第4章 アナログ電子回路の基礎」の4-2 フィードバック(負帰還)で説明した負帰還という回路技術を用いると、高精度の信号処理が可能となります。

例えば、図2 のような回路構成にすれば電圧利得 10倍の反転増幅回路になります。
つまり -10倍ということですので、さらに反転するなどして +10倍にすることが可能です。

利得10倍の反転増幅回路

図2. 利得10倍の反転増幅回路

この構成の特徴は、電圧利得が「抵抗の比」で決まっているというところです。
この回路の場合は抵抗比が 10:1 なので 10/110倍増幅です。

先ほど述べたように、半導体素子は製造ばらつきや温度特性が大きいのですが、オペアンプも半導体素子であるトランジスタを組み合わせた回路です。
なので、オペアンプの百倍、数千倍以上という電圧利得も大きく変わります。
しかし、どんなに電圧利得が変わった場合でも十分に高い値が保たれるのであれば、電圧利得は抵抗比で決まります。

一方、抵抗ですがこれも製造ばらつきや温度特性を持ちます。
しかし製造ばらつきに関しては、なるべく抵抗比が 10:1 となるように工夫すればよく対処可能です。
温度特性に関してですが、個々の抵抗値が温度によって変化はしますが抵抗比は変わりません。

以上が、高精度な信号処理が可能となる理由です。
オペアンプを用いて負帰還回路を構成することは、非常に有効な手段なのです。

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