電子回路設計 入門サイト

電子回路設計の基礎 > 5-2. オペアンプの特徴

オペアンプの特徴

オペアンプは、アナログ回路にとって欠かすことの出来ない重要な回路です。しかし、初めての方やオペアンプをあまり使ったことのない方にとっては、非常に理解しづらい回路でもあります。

電子回路では、電圧増幅率のことを「電圧利得」といいます。また単に「利得」や「ゲイン」といったりしますが、オペアンプの電圧利得は数百倍、数千倍以上といった値です。なぜ、そんなに極端に大きな値が必要なのでしょうか?

また、オペアンプを用いて負帰還回路を構成したとき、「仮想短絡バーチャル・ショート)」という考え方が出てきます。これも慣れない方にとっては、非常に理解しづらい考え方です。

1. 仮想短絡(バーチャル・ショート)ってなに?

オペアンプは、図1のような回路記号で表されます。

オペアンプの回路記号

図1. オペアンプの回路記号

同図 (a) のように、入力端子は2つで「+側」を非反転入力端子、「-側」を反転入力端子と呼びます。そして、出力端子が1つです。その他として、電子回路であるため当然ですが電源端子があります。ただしほとんどの場合、電源端子は省略され同図 (b) のように表されます。

さて、ここで数式を用いて説明する前に、負帰還回路を構成したときにオペアンプがどのような機能を持つか説明します。まず説明するのは回路的な動作ではなく、どのような機能を持つかです。

ある目的を持った回路は、その目的を果たすための機能を持つように設計されています。極端な言い方をすると、その回路に目的を果たすための「意思」が与えられます。「オペアンプ」という回路がどのような「意思」を持っているのかを考えてもらえれば、負帰還回路を構成したときの特徴である仮想短絡バーチャルショート)を理解できると思います。

図2. はオペアンプの「意思」を分かりやすいように図示したものです。

負帰還時のオペアンプの「意思」

図2. 負帰還時のオペアンプの「意思」

オペアンプは、常に2つの入力端子である非反転入力端子と反転入力端子の電位差(電圧差)を見ており、この電位差が 0V となるような出力電圧を探しています。つまりオペアンプの「意思」とは、2つの入力端子の電位差を 0V とするため出力電圧を調整することなのです。

実例を挙げてみてみましょう。図3 は、抵抗を用いた反転増幅回路と呼ばれるもので、 1kΩ5kΩ の抵抗とオペアンプで構成されています。そして、Vin には 1V の電圧が入力されているものとします。

非反転入力端子( + )はグランド( 0V )に接続されています。なので、オペアンプは出力端子が何 V になれば反転入力端子( - )も 0V になるのか、その答えを探します。

仮想短絡の実例

図3. 仮想短絡の実例

仮に、反転入力端子( - )が 0V となれば 1kΩ の抵抗には「オームの法則」 V=I×R より、 1mA の電流が流れることになります。つまり、 5kΩ の抵抗に 1mA 流れる電圧がかかれば反転入力端子( -= 0V が成り立つということです。よって、Vout = - 5V となるようにオペアンプは動作します。

このように、オペアンプの非反転入力端子と反転入力端子は実際には短絡(ショート)している訳ではないのに、常に2つの入力端子が同じ電圧となることから仮想短絡バーチャル・ショート)と呼ばれています。


◆ おすすめの本 - すぐに使える! オペアンプ回路図100

【特徴】
  • 100を越えるオペアンプの実用的な回路例が掲載されている。
  • 初心者でも実際に回路を製作できるように、回路図に具体的な抵抗値やコンデンサの値が記してある。
  • 初心者の入門書としても使えるし、回路設計の実務者のハンドブックとしても使える。
  • 実際に作成した回路の出力信号を、パソコンのマイク端子から入力し波形を確認できるプログラムをWebページからダウンロードできる(ただし、Windows XPでのみ動作保証)。
【内容】
  以下に記すオペアンプを使った回路例が掲載されています。(以下は一部)
  • 反転増幅回路、非反転増幅回路、電圧フォロワ(ボルテージフォロワ)などの基本的な回路
  • 加算回路、減算回路、微分回路、積分回路などの演算回路
  • ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタなどのフィルタ回路
  • 定電流回路、定電圧回路、電流-電圧変換回路、周波数-電圧変換回路など
  • 温度センサー回路、光センサー回路などのセンサー回路
  • 正弦波発生回路、三角波発生回路など

○ amazonでネット注文できます。

◆ その他の本 (検索もできます。)

2. 仮想短絡を実現するためのオペアンプの動作

「1. 仮想短絡(バーチャル・ショート)ってなに?」での説明により、仮想短絡バーチャル・ショート)がどのようなものなのか理解して頂けたと思います。さてここでは、その仮想短絡(バーチャル・ショート)がどのような回路動作により実現されるのかについて述べていきたいと思います。

図4 の特性が仮想短絡(バーチャル・ショート)を実現するための特性です。

オペアンプの入出力特性

図4. オペアンプの入出力特性

Vinp - Vinn = 0 での特性が急峻ですが、この部分の特性がオペアンプの電圧増幅率にあたります。理想の仮想短絡を得るためには、電圧増幅率は無限大となることが必要です。

Vinp が非反転入力端子の電圧、 Vinn が反転入力端子の電圧です。また、オペアンプの電源は ±10V です。Vinp - Vinn がマイナス側のとき Vout-10V 、プラス側のとき Vout+10VVinp - Vinn0V 付近で急峻な特性を持ちます。

このとき、図5 の回路について考えて見ましょう。

反転増幅回路

図5. 反転増幅回路

まず、 Vout=0V だった場合どうなるでしょう?

Vinn の電圧は、 5kΩ/( 1kΩ + 5kΩ ) × ( 1V - 0V ) より Vinn=5/6V = 0.83V となります。Vinn=0.83V ということは、 Vinp - Vinn = -0.83V ということになります。

図4 の特性から Vinp - Vinn = -0.83V ということは Vout = -10V となり、オペアンプは Vout = 0V では回路動作が成り立たず Vout の電圧を下げようと働きます。

今度は、Vout=-10V だった場合どうなるでしょう?Vinn の電圧は、 5kΩ/( 1kΩ + 5kΩ ) × ( 1V + 10V ) - 10V より Vinn = -0.83V となります。Vinn=-0.83V ということは、 Vinp - Vinn = 0.83V ということになります。

同様に、図4 の特性から Vinp - Vinn = 0.83V ということは Vout = 10V となり、オペアンプは Vout = -10V では回路動作が成り立たず Vout の電圧を上げようと働きます。

オペアンプが図4 のような特性を持つとき、結果的に Vout = -5V となって図5 の回路は安定することになります。

Copyright(c) 電子回路設計の基礎 わかりやすい!入門サイト